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![]() 《極端に言えばこんな話》 1930年代の3丁目の夕日なニューヨーク。 ちょい不思議系の入った貧乏女優ナオミ・ワッツを、食い物を餌にしてまんまと スカウトしたイカガワシイ映画監督のジャック・ブラックは、戦場のピアニスト チックな脚本家エイドリアン・ブロディを拉致したまま、明らかに不審船としか 思えぬボロ船で、一路絶海の孤島に。 で、島の名前を聞いただけで震え上がる人々を、過剰すぎるショック演出で演出 したあと、いつになったら肝心のキングコングが出てくるのかと、観客がしびれ を切らす直前に、船はスカルアイランドに到着。 明らかに島の恐竜より恐い原住民に、Whats?と叫ぶ間もないくらい問答無用に さらわれたナオミ・ワッツは、さらにキングコングに連れ去られ、とにかく曲芸 とダンスでコングを笑わせる。一方ジャック・ブラック一行もナオミ・ワッツを 救出したり、映画を撮影したりするために島の奥地に分け入るが、明らかにキン グコングより恐ろしい昆虫軍団に襲われて絶体絶命に。しかし、これ以上アメリ カ人と呼べるアメリカ人はいないとさえ思えるアメリカ人な顔のへっぴり俳優に よって、窮地を救われる。それにしても、こんな30年代の人間としか思えない 古臭い顔の俳優を、よく探してきたものだ。この俳優、画面に登場するだけで笑 えるぞ。 で、いろいろあってキングコングは囚われ、ニューヨークで見せ物に。お約束通 り鎖を引きちぎって脱出したコングは、ふたたびナオミ・ワッツを連れて、エン パイヤステートビルのてっぺんによじ登り、戦闘機の攻撃で落下して死ぬ。いや、 美女が殺した。 《感想》 ピーター・ジャクソンがキングコング好きなのは、よくわかった。 タイトルの書体も33年当時と同じ書体だし、フェイ・レイネタもやったし、音 楽もときどき33年版になるし、見せ物になったコングの前で踊る原住民の衣裳 やメイクも33年版と同じだし、もうオマージュの洪水というか好き放題である。 これが嫌味でなく微笑ましいと感じられるのは、そうした遊び以外の部分がしっ かりと作られているからだ。 コングがアンを見初めてから、段々ヘタレになっていく過程を丹念に追う演出も、 テーマ表現としては好ましい。ニューヨークでのアイススケートシーンも、往年 のコングを知る者の目には、ある意味いまいましい擬人化の極致に映るかも知れ ないが、もうこの時点で既に、コングは美女に殺されているので、こういうシー クエンスはそれを極端化して見せるために必要なものだといえる。 キングコングはゴジラと違って、人間の持つ兵器で簡単に殺されてしまう生身の 野獣である。元々コングは文明との齟齬の中で死に至る可哀想なな野性動物なの であって、単に悲劇として捉えれば、泣かせのキャラクタードラマとしても楽し めよう。しかし作品のテーマとしては、女に振り回されて自滅していく単純な男 の滑稽を描いているとみた方が面白いわけで、そういうウィットを、比較的わか りやすいカタチで描いたピーター・ジャクソンの演出は、単なるリメイクものと いうより、長い年月をかけて熟成され続けてきた名作映画の解釈について、その 読み解き方を、より克明に示唆したものといえる。 そういう文芸的でみみっちい感想を吹き飛ばしてしまうかのような、コング対恐 竜の一大激闘シーンや、複葉機とのダイナミックな戦闘シーンは、「ロード・オ ブ〜」を超えて、より見事に体感性を伴った、この映画最大の見せ場である。 Vレックス3頭とコングのハンディキャップマッチなどは、そのしつこすぎる演 出が楽しくて、満腹感を感じる程怪獣を観ていたい、おたくな特撮ファンの溜飲 を思いっきり下げさせてくれた。 またゾンビを思わせる原住民の描写に至っては、軽妙なジャック・ブラックの小 芝居では和めないくらい、理不尽に恐い。きっと、こういう脂っこい演出をする から、カロリーを消費しまくってピーター・ジャクソンは激ヤセしたのだ(笑)。 ただ、コング自体の意匠をゴリラに近付け過ぎたために、元々「怪獣」としての 属性を持っていたコングが、本当にデカいゴリラにしか見えないという不満もあ り、他の恐竜と対象化しないと、コングの怪獣性が見えて来ないというジレンマ も感じてしまった。これって、日本の怪獣映画を見過ぎたこっちの感性が偏狭す ぎるのだろうか。 とりあえず、今回のコングには、マイティージョーじゃない んだから、一回ぐらいは背筋をしゃんと伸ばして、のしのし歩いてみろ、と見当 外れを承知で我が儘を言っておきたい。 あとひとつ、絶叫だけが印象的なフェイ・レイよりも、オッパイちら見せなジェ シカ・ラングよりも、今回のナオミ・ワッツの方がずっとキュートで個性的で、 歴代で一番好感の持てるアン・ダロウを演じていたことを特筆しておく。 ピーター・ジャクソンも、きっとこのキャスティングには満足していることダロ ウ。 ![]() 《極端に言えばこんな話》 ゴッサムシティで両親を殺されたという共通の過去を持つ5人の少年が、チベッ トの山奥で様々な超能力を身につけ、正義の戦隊バットマンビギンズを結成。 巨大ロボット・バットモービルを駆使して、悪の軍団「影の同盟」と熾烈な戦い を展開する。 《感想》 バットマンブラックを演じるクリスチャン・ベールが正義のヒーローを演じて好 演。無数のコウモリを操って繰り出す必殺技コウモリアタックは、CGではなく 実際の吸血コウモリを調教して使用しており、撮影中に吸血されたベールは体重 が激減したという。 その他、ライトセーバーを奮うバットマンホワイトをリーアム・ニーソン、隕石 を呼び寄せ敵の頭上に落下させるバットマングリーンにモーガン・フリーマン、 不死身の身体を持ち何千年も生き続けているバットマンイエローにゲイリー・オ ールドマン、元スパイという職歴を活かして戦隊をサポートする老獪なバットマ ンブルーをマイケル・ケインが各々演じている。 出演者は日本から取り寄せたマジレンジャーのビデオや、パワーレンジャーをひ たすら観ることで研究し、見栄きりポーズや合体攻撃のコツをつかんだそうだ。 敵の「影の同盟」首領ザ・ラスト・サムライを演じるのは渡辺謙。この役を演じ るのは彼しかいない、と主張するクリストファー・ノーラン監督直々の指名によ るキャスティングで、西南戦争を生き延び、虎視眈々と武家社会の復活を狙う悪 の首魁を嬉々として演じているが、出番はほんの5分程度だ。 正統派のヒーローものであるが、登場人物全員が10分毎に記憶を失ったり、不 眠症に陥ったりする展開が観客の混乱を招く原因となり、やや低調のノリ。 それはそれで面白いのではないかとも思うのだが、なにしろ筆者はこの映画を観 ていないのでさっぱりわからない。ただ勧善懲悪では飽き足らないヒーローもの の登場で、ハリウッド映画は新たな局面を迎えたのではないだろうか。 ![]() 《極端に言えばこんな話》 第2次世界大戦末期、ナチスのユダヤ人収容所でさんざんな目に遭ったメリン 神父が、さらに3年後、アフリカで悪魔パズズに遭遇し、さらにさんざんな目 に遭う。映画では描かれないが、その数十年後、メリン神父はワシントンで、 またまたさんざんな目に遭うことになるのだった。 《感想》 70年代生まれで、オカルト映画に免疫のない少年時代を過ごした筆者にとっ て、強烈なトラウマとなっている「エクソシスト」の続編、というか、前説み たいな話である。 大人になって、実は「エクソシスト」は物凄く格好いいハードボイルド作品で あったことに気づき、大ファンになってしまったのであるが、それは作品の雰 囲気とか、猟銃をぶっ放しながら演出したウィリアム・フリードキンの狂った センスによるものであって、別にメリン神父の過去を知りたいなんて気持ちは これっぽっちもなかったため、かなり気楽に観ることが出来た。 ん?メリン神父の過去は別に気にならないが、メリン神父を演じたマックス・ フォンシド−の現在は気になるな。ちょっと調べてみよう。 ・・・・あ、マイノリティ・リポート出てるのか。観てなかった。 今回、メリン神父を演じるのは、「ディープ・ブルー」で生きながら青ザメに 食われていたステラン・スカルスゲールド。この俳優の名前を一回聞いただけ で覚えられる人は天才でステラン。 で、このステファン・スカルゲド−が、実にうっそりとしたメリン神父を演じ ているのであるが、顔立ちは全然似ていないのに、雰囲気はシド−のそれに似 せようという努力が感じられる向きもあって、結構好感度高し。なかなかやる なステルス・ゲドール。 で、このステルスが悪魔祓いをするのが、イザベラ・スコルプコ演じる女医。 うーん、なんでこの映画はややっこしい名前の俳優ばっかり使うのか(笑)。 で、ステラーとアカプルコが洞窟でくんずほぐれつ追いかけあいの大活劇を 演じるのだが、その様相はまさに、ショーケンと小川真由美の「八つ墓村」 クライマックス状態で、なんだか可笑しい。 前半は、暗喩を含んだ謎めいた展開に興味を惹き付けられるが、いざ見せ場と なるとわかりやすい活劇調になるあたり、さすがはレニー・ハーリン監督。 名前同様、映画も実にわかりやすい(笑)。 製作にはいろいろ難儀があった作品と聞いているが、公開されてしまうと、 「ふーん」なんて感じで、気づかないうちに公開が終っていた・・・そんな典 型的な「いつの間にか映画」。 やっぱり人気作品の続編的な作品を作るなら、ジョン・ブアマンの「エクソシ スト2」くらいひっくり返った壊れ映画にした方がインパクトあり、なのかも 知れないなあ(笑)。 ![]() 《極端に言えばこんな話》 戦時下の日本。大衆演劇の若い劇作家が、思想統制のための検察と、一冊の喜劇台本 の改訂を巡って争い、やがて心を通じ合わせていく。 要するに、笑いというパフォーマンスで自己表現しようとする稲垣吾郎と、生まれて この方、一回たりとも笑ったことがないという偏屈な役所広司が、異なる価値観を突 き合わせることで新しい価値感をみつけて・・・もういいや(笑)。 《感想》 何年か前に西村雅彦と近藤芳正の二人芝居による舞台を観劇していたので、ストーリ ーはわかっていたのだが、それでも新鮮な気持ちでこの映画を観ることが出来たのは、 検察官を演じる役所広司の怒鳴りっぷりと狼狽ぶりが、あまりにも面白すぎたからで ある。 不自然な横分け頭の額に青筋を立て、血走った眼を剥いて怒鳴りちらす役所広司を観 るスペクタクルは、「宇宙戦争」のトライポッドが地面を割ってどばばばと出現する 特撮映画ならではのスーパーインパクトのそれに似て、あまりにも強烈。 西村雅彦の怒声もなかなか迫力があったが、役所広司の、全身を振るわせながら跳ね 上がるようにヒートアップする激怒っぷりは、“怒り系”俳優としてまさに面目躍如 の名演といえ、別にそんな人はいないと思うが、怒鳴っているオヤジ好きな人には、 まさに必見の映画となっている(笑)。 思えば役所広司は、「突入せよ!」でも、「ローレライ」でもよく大声を張り上げて いた。落ちついた演技や、自然体のコミカルな芝居にも定評のある俳優だが、そうい う文芸な趣きよりも、むしろ全身を硬直した棒のように突っ立てながら大音声で咆哮 している役所広司の方に、観客のストレスを解放させる強引なパワーがあると思うの は筆者だけか。役所広司は、丹波哲郎枯れ、三船敏郎死した日本映画界にあって、 現時点では、カラリと怒鳴ってサマになる唯一の邦画俳優なのではあるまいか。 かつての超大作映画「日本沈没」には小林桂樹演じる怒鳴り系わがままキャラクター の代表格・田所博士が登場する。 今度樋口真嗣監督で、この「日本沈没」がリメイクされることが決定したようだが、 「ローレライ」つながりで、是非とも田所博士役に役所広司のキャスティングを期待 したいところだ。今後の日本映画が、予算や制作規模だけでなく、気持ちまでみみっ ちくならないように、役所広司には、もっともっと怒鳴り続けて欲しいワケなのであ る(笑)。 ![]() 《極端に言えばこんな話》 193何年のアメリカ。突如として現れた、どことなくジブリ風の巨大ロボットが ニューヨークを襲撃。そのロボット以上に突如として現れたスカイキャプテンが街 を救う。巨大ロボットを送り込んできた謎の科学者のスケールのデカイ陰謀を阻止 するため、スカイキャプテンは相方の元カノと痴話喧嘩しながら、愛機を駆って敵 地へ。途中、空中要塞を指揮するアイパッチの女将校に助けられながら、悪の要塞 島に潜入を果たしたキャプテンは、なんだかよくわからないままに怪獣や女ロボッ トと戦い、元カノともちゃっかり復縁しつつ、地球の危機を救うのだった。 《感想》 あんまりヒットしなかったと聞いていたのだが、ま、趣味映画っぽいし仕方がない よな、なんて思いながらも結構楽しめた1本。 監督のK・コンランはこれがデビュー作になるらしく、名前の割には混乱も少なく 堅実に、肝を押さえた娯楽映画を作り上げている。この監督、日本のアニメ作品や、 黒澤映画に影響を受けたと語っているが、そういう気配を感じさせながらも、柔軟 な発想と独特のカラーをミックスして、オリジナリティ豊かな世界観の構築に成功 している。 アイデアは、日本SFの始祖、海野十三や押川春浪に似てレトロかつ奔放。海中を 自在に進む戦闘機や、空中に浮かぶ巨大飛行基地など、阿呆らしいと思いながら、 特撮ファンの琴線をくすぐる、ガラクタな楽しさに満ち満ちている。 ジュード・ロウの、生真面目でいて、どこかとぼけた味わいも面白く、ゲスト出演 的な登場ながら、観る者に否応無しに強い印象を残すアンジェリーナ・ジョリーの アイパッチと、艶かしい唇のコントラストが横目観賞ポイント(笑)。 そういえば、アンジェリーナ・ジョリーって、アンジョリーナ・ジェリーとか、ア ンジョリーナ・ジョリーでも検索にヒットしまくるぞ(笑)。アンジェリーナ・ジョ リー、略してアンジョリー・・・あ、これでも引っ掛かった! どうなってんだ、アンジョリー(笑)。 ![]() 《極端に言えばこんな話》 なんだかよくわからない実験で、鹿賀丈史率いる自衛隊の一部隊がタイムスリッ プ。代わりに戦国時代の侍がタイムスリップしてきて、なんだかよくわからない うちに、歴史が現代を抹消しようと、何でも飲み込む穴ボコを送り込んできた。 かつて鹿賀丈史の部下であった江口洋介は、いつも半べそ顔の鈴木京香や、何か というと目を向いて怒鳴り散らす生瀬勝久、背広姿にポニーテールの北村一樹に 説得されて、これまた都合良くタイムスリップ。平成人の腑甲斐無さに落胆する あまり、織田信長になりすまして歴史をいじくろうとする鹿賀丈史と戦い、泥縄 式に事件を解決して、どうにか帰って来るのだった。 《感想》 映画が始まって、5分と経たないうちに自衛隊が最初のタイムスリップ。さすが ゴジラ映画で冒頭15分クライマックス伝説を作った手塚昌明監督だけあって、 実にストレスのない導入部である。 そのあとは、どうにかストーリーの辻褄を合わせながら、ただ生真面目に映画は 進行し、それなりの水準の娯楽作に。 何と言うか、可もなく不可もなくといった小ぢんまりした感じなのたが、そこは それ真面目な作風に嫌味はなく、ただ妙に太った嶋大介だけが観る者に不安を感 じさせる以外は、そこそこ安心して観ていられる映画になっている。 破綻を恐れなければ、ひょっとするともっと面白い映画になったかも、と思うの だが、映画なんか壊れてしまえ、なんてサディスティックに思っているのは筆者 だけかも知れないので、とりあえず分かりやすい大衆娯楽の線を踏み外さずに帰っ てきた角川映画を素直に喜びたい。 戦国時代に石油精製所の煙突がにょきにょき突っ立っているビジュアルが楽しく て、鹿賀丈史も抑えた大人の演技で好演。鈴木京香も軍服着て走り回っている割 には色気があって、伊武雅刀の怪演が映画に適度なユーモアを与えている。 かつての「戦国自衛隊」と比較する向きもあろうが、根本的にリメイクではなく、 モチーフだけを同じくする別物というスタンスで作られているようなので、そう した論点はナンセンスではあろう。 それよりも気になるのは、今回の映画の興行的成功を受けて、またもや「リング」 よろしくハリウッドでリメイクが検討されているというニュースだ。ラストサム ライ+ファイナルカウントダウンみたいなノリの映画を目指すのだろうか。 ・・・と思って調べてみたら、ちょっと違った(笑)。 http://www.sanspo.com/geino/top/gt200506/gt2005063001.html なあんだ、「怪獣王ゴジラ」か(笑)。 それにしても、最近コンビニなんかで、戦国自衛隊の続編といったコミックも沢 山見かけるし、なにやら戦国自衛隊インフレの予感(笑)。 ノンキャラクターでも市場はあるものだと感心した次第。 ![]() 《極端に言えばこんな話》 アメリカのとある場所でそれなりに働く無知蒙昧なブルーワーカーのトム・クル ーズが、元妻との間にもうけた子供2人を預かることになり、キャッチボールな んかして窓ガラスを割っているうちに、地面を割って宇宙人の侵略ロボットが突 如出現。動転したトムは、親友のクルマを強奪して家族ぐるみで逃走する。 片っ端から人間を灰にしながら襲いかかる宇宙人を見て、恐怖のあまり半泣きに なりながら逃げまどうトム一行は、わけがわからないうちに半分イカレたティム ・ロビンスに匿われ辛くも一命を取り留める。しかしティム・ロビンスが無謀に も宇宙人に戦いを挑もうとしていることがわかるや、無用な危険を回避するため にこれを殺害して逃走。 やがて宇宙人に囚われて、ちゅーっと吸血されそうになったトムは、たまたま持っ ていた手榴弾で宇宙人の侵略ロボットを倒すが、そんな切羽詰まったトムの活躍 を尻目に、地球の細菌に感染した宇宙人は勝手に死ぬ。 廃虚と化した都市をバックにナレーション。 「あらゆる生命の生き死にに無駄などないのだ」・・・・・。 ティム・ロビンスは? 《感想》 トム・クルーズがこれまでにない情けない役柄を必死で演じて、新境地開拓。 主人公がここまで不安そうに逃げまどっていると、観ているこちらもなんだか不 安な気持ちになる。 この映画、例えばゴジラ映画なんかで逃げまどっている名も無いエキストラを一 人だけひょいとつまんで、そいつを主人公に一本映画を作ってしまったような作 品なので、スケールとしては思いっきりミニマム。 観客は、2時間とちょっとの間、半ば強制的にひたすら理不尽な暴力を奮う吸血 宇宙人の猛威と、ただ逃げまどうトム・クルーズを延々と観せられつづけるわけ で、映像的なカタルシス以外、ストーリー的にはもう、本当になにもない空洞化 した大状況を、よくワカラナイまま楽しむといったイベントムービーの趣向だ。 スピルバーグのフェティシズムと言おうか、しつこいまでに丹念に描かれる破壊 のディティールが、凄まじいまでの臨場感を創出しており、トム演じる主人公が、 あまりに阿呆過ぎて感情移入出来ないということ以外、場当たり的にはかなりコ ワ面白い作品となっている。 主要登場人物は驚くほど少なく、役者の演技を楽しむなら、映画中盤あたりの、 トム&ティムのうっそりとしたドタバタ劇が、あんまり笑えないのだが笑おうと 思えば笑える程度。いや、別に笑わんでもいいのだが、それほどまでにユーモア が意図的に排されている作品なので、観終ったあとに、ああ面白かった、飯でも 食いに行くか、なんて気分にはなれない、うす暗い娯楽映画である。 他人様にどう勧めていいのかよくわからないスピルバーグ作品なんて初めて観た ような気がするが、個人的には大層面白かったので、そのうちもう一回ぐらいは 観に行こう。 そういえば、上映前にリメイク版「キングコング」の予告がかかっていたが、何 より驚いたのは映像そのものよりも、P・ジャクソンの激ヤセぶりだ。 人間、大金を手にすると長生きしたくなってダイエットするものなのか、あるい は撮影が過酷過ぎて身が細ったのか、ま、そんなことはどうでもいいことなのだ が、それにしても、「キングコング」に「宇宙戦争」って、今は一体1900何 年なのかしら、なんてちょっと困惑したり嬉しかったりする中年特撮ファンの夏 なのであった。
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